第7回 東京湾シンポジウム
東京湾再生に向けた行政・研究者・市民の取り組み
開催日時 平成18年11月10日(金)13:00〜17:30
開催場所 パシフィコ横浜 会議センター 5階 小ホール
主 催 国土技術政策総合研究所,港湾空港技術研究所,東京海洋大学
後 援 東京湾再生推進会議, 土木学会海洋開発委員会
参加人数 登録数280名、当日参加者数216名
プログラム
「湾の健康診断」サンフランシスコ汽水域研究所
理事長 Mike Connor 氏
「東京湾再生のための行動計画の中間評価」国土交通省港湾局環境整備課
長瀬和則 氏
「豊かな東京湾の再生に向けて」水産総合研究センター中央水産研究所
入江隆彦 氏
「東京湾の環境診断システムの構築に向けて」東京海洋大学海洋科学部
山崎秀勝 氏
「都市臨海部に干潟を取り戻すプロジェクト」国総研沿岸海洋研究部
古川恵太
「東京湾湾奥部における水域調査」国立環境研究所水土壌圏環境研究領域
牧秀明 氏
「東京湾の水環境はどう変わったか」東京都環境科学研究所調査研究部
安藤晴夫 氏
パネルディスカッション「東京湾の再生に向けた具体の方策」
話題提供:「市民の視点からみた自然再生」伊勢・三河湾流域ネットワーク
辻淳夫 氏
パネラー:話題提供者,発表者
東京湾再生に向けた取り組みについて再認識していただくとともに、東京湾の再生を意識した研究成果を紹介する第7回の東京湾シンポジウムを開催いたしました。
「市民」の目から見た自然再生についても話題提供いただき、東京湾の現状を「知り」、自分ができることに「気づき」、次の行動に「つながる」きっかけとなるようなシンポジウムとなるよう、準備を進め、当日は多くの貴重な意見交換・情報共有のできました。
ご参加・ご協力いただいた皆様、各機関に心よりお礼申し上げます。
事務局代表:国総研・古川恵太
以下は、速報として事務局がとりまとめた発表内容の概要です。
発表内容・議論速報
(別途、報告書を作成する予定ですが、速報として事務局がとりまとめました。著者の方の校正を頂いておりませんので、正確でないかもしれません。事務局の力不足と、ご容赦ください。)
基調講演:サンフランシスコ汽水域研究所
理事長 Mike Connor 氏
・ どのように状況が変わるかということを正確に把握するパフォーマンス・メジャー(評価指標)の重要性が、指摘された。
・ 評価指標に必要なことは、良い概念モデル、因果関係の理解、管理のための行動計画、達成可能な目標が必要の4つである。
Ø
上手く評価できる因子として、保全された生態系、DOなどがあり、上手く評価できない因子として、クロロフィル、魚への鉛汚染、河川の流れ、水質・底質などがあることが指摘された。
・ まとめとして、良いモデルが必要だが、それだけではなく、有効な対応策が立てられるか、有効な目標を持てるかなどが重要であること、前例を学び、前進していくことが重要であることなどが示された。
国土交通省港湾局環境整備課
長瀬和則 氏
・ 「東京湾再生のための行動計画(H15.3〜10年計画)」が時代とともに書き換える計画であることも含め概括的に解説された。
Ø
海域における取り組みとして、市民との連携、環境機能と防災機能の併設、実験的取り組み、長期的取り組みなどが重要であると考えていること、およびその事例が紹介された。
・ 現在、他の海域への取り組みへの発展を意見交換の場を設けつつ実施しているところであることが情報提供された。
独立行政法人水産総合研究センター中央水産研究所
入江隆彦 氏
・ 「豊かな東京湾の再生に向けて(H17.11)」を作成した際の、親水性、食文化、魚場環境、漁業に関する各分科会の成果が以下の点などを中心に解説された。
Ø
漁業としては、漁獲量の斬減するも、現在3万トン(魚類は一定、貝類が激減)の漁獲があり、多様な漁業が継続(東京湾に285種の存在)している。
Ø
食文化として、年中、なんらかの旬の魚介類がある多様性を有している。
Ø
漁場は埋立による変遷を受け、近年長期化する青潮の発生が問題としてある。
Ø
遊魚人口400万人に代表される親水性も重要である。
・ まとめとして、これからの再生に向けて環境を今以上に悪化させない、生物生産を豊かにしていく、漁業と遊漁の共存を図る、連携を強化するなどの視点を持ち、食べ・遊び・実感することの大切さが強調された。
東京海洋大学海洋科学部教授
山崎秀勝 氏
・ 順応型環境管理システム構想の重要性、さらに、そのためには、診断システムが不可欠であることが重要であるという視点から、水の混ざり区合いに注目した診断システムの提示がなされた。
Ø
東京湾・サンフランシスコ湾の状況の違いは、成層が強い、弱いにある。
Ø
例えば、赤潮について東京湾(成層が強い湾)では常態化、サンフランシスコ湾(成層が弱い湾)で最近増えてきた状況である。
・ 赤潮を例とると
Ø
外洋からの影響を受けている形跡や、水の混ざり具合が発生の鍵となっている可能性等が示された。
Ø
そうした機構解明、評価手法の開発においては、数値モデル(GETM(ゲッタム)モデル)での全体像の俯瞰が重要かつ効果的であることの指摘がなされた。
・ ビクトリア大学のネットワークモデルを例に取り、観測のユニット化・標準化やアウトリーチ、研究者の交流、発展の重要性が指摘された。
国総研沿岸海洋研究部海洋環境研究室室長
古川恵太
・ 都市臨海部に干潟を取り戻すプロジェクトが紹介された。
²
潮溜まりの重要性が大阪湾の実証実験から得られたことの紹介。
²
東京湾におけるさわれて、食べられる、生き物の棲み処づくりの試みなどが住民・行政と連携しながら実施されている状況が紹介された。
・ 実際の行動計画の検討、推進のために役立てるツールのひとつとして、東京湾環境マップが提示された。
国立環境研究所水土壌圏環境研究領域海洋環境研究室
牧秀明 氏
・ 雨が降った後の出水の影響について、東京湾での観測を元にした報告がなされた。
Ø
背景として、河川量に匹敵する下水処理水量や合流式下水道からの越流問題があること。
Ø
降雨語の現象として、窒素は総量として増えないこと、リンは総量が顕著に増加する(懸濁態の粒子の寄与?)ことなどが示され、降雨が陸起源のデトリタス供給となることが示された。
・ 京浜運河における環境調査の成果から、運河内における流況と環境の関係の深さが示され、原因への対策と、それが影響伝播する過程の研究の連動の重要性が指摘された。
東京都環境科学研究所調査研究部
安藤晴夫 氏
・ 東京湾の環境の長期変遷が、公共用水域水質測定データ30年のモニタリング結果をもとに紹介された。
Ø
特徴として、河川からの流入負荷量が激減(CODで半減)しているにもかかわらず、赤潮、青潮も頻繁に発生しており、改善傾向が明確でないと位置づけられることが指摘された。
Ø
東京湾に存在する東西での水質の差について、エスチュアリー循環の強化や外洋水の導入などの可能性が指摘された。
・ 最近のデータ(2002年以降)を見ると、T-N,T-Pの改善傾向が見れることなども紹介され、長期、定点でのモニタリングの必要性が指摘された。
伊勢・三河湾流域ネットワーク
辻淳夫 氏
・ 伊勢・三河湾再生の議論をもとに、三河湾の酸素の欠乏(苦潮)の恐ろしさについて指摘された。
Ø
三河の河口(六条潟)は最大のアサリの稚貝発生地だった、それが打撃を受けた
Ø
生き物への影響(死滅)がある。とても看過できない
・ こうした状況を誰の目にも分かるように示すことが大切であり、以下のような取り組みの重要性が指摘された。
Ø
地形変化を図化すること(浅い海にある港湾、最後に残った干潟、それら全てを俯瞰する必要性がある)
Ø
貧酸素の状況を把握すること(藤前干潟で貧酸素水塊が改善、港の中で貧酸素、常時監視が必要、「公害」認定が必要)
Ø
干潟の生態系についての理解を進めること(いのちの生産力についての認識を)
・ かつての海を取り戻すために流域全体での考え方が必要であり、聖域を設けない干潟の再生や、生き物が自ら作り出す復元力に委ねるという考え方が大切であり、「いのちのつながり」について考えていく必要がある。
パネル討論
サンフランシスコ汽水域研究所 理事長 Mike Connor 氏
国土交通省港湾局環境整備課 長瀬和則 氏
独立行政法人水産総合研究センター中央水産研究所 入江隆彦 氏
東京海洋大学海洋科学部教授 山崎秀勝 氏
国立環境研究所水土壌圏環境研究領域海洋環境研究室 牧秀明 氏
東京都環境科学研究所調査研究部 安藤晴夫 氏
伊勢・三河湾流域ネットワーク 辻淳夫 氏
進行:国総研沿岸海洋研究部海洋環境研究室室長 古川恵太
討論議題1.現状認識に基づき「今、何を優先すべきか」
討論議題2.多くの関係者が「どのような役割分担ができるのか」
討論議題3.それぞれが考える「今後の予定や期待・希望」
上記の議題について意見交換を行いました。
以上(文責・事務局)