港湾工事や荷役の安全確保、最適な施工管理あるいは航行
船舶の安全確保等のためには的確な波浪予測が不可欠である
。波浪予測手法としては、波浪推算法を用いる方法と統計モ
デルを用いる方法がある。この内、波浪推算法を用いる方法
では、広域の気象情報が必要で、計算に際しては比較的大規
模なシステムが必要であって多くの費用や専門知識を要する
ことが一般である。一方、統計モデルを用いる方法は、専門
知識を必要とせず、比較的容易に波浪予測を実施できる利点
がある。
既往の統計的波浪予測手法としては、重回帰式や多変量自
己回帰式等の回帰式を用いる方法や分割表を用いる判別型モ
デルなどの種々の方法が提案されている。しかしながら、既
往の回帰式を用いる方法では予測波高が観測波高より遅れて
変動する重大な欠点を有し、また、判別型モデルでは予測波
高を具体的な数値として推定できない等の難点があり、実用
に供し得る信頼性の高い統計的波浪予測手法は未だ提案され
ていない。
本報告は、既往の統計的波浪予測手法の問題点を種々検討
し、実用的かつ信頼性の高い統計的波浪予測手法として、新
たに主成分分析とカルマンフィルタを組み合わせたモデルを
提案するものである。本方法の適用性、妥当性は5年分の気
象・海象データを用いて数値的に検討されている。検討結果
によれば、本方法は実用上許容出来る誤差範囲内で数日先の
波高を予測し得ることが確認されている。
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