軟弱地盤の多い沿岸域では、構造物の形状や地盤改良の範
囲などが円孤すべり解析の安全率によって決まることが多い
。本研究は地盤の不均一性を考慮した信頼性解析を行うこと
によって、初期建設費や破壊確率、破壊時のコストを計算し
、期待総建設費を最小にするという観点から設計に用いるべ
き最適な安全率について検討したものである。主要な結論は
以下のようにまとめられる。
a) 港湾構造物などの円弧すべり解析の最適な安全率は、
構造物の重要度、地盤の不均一性や定数の信頼度及び施
工条件によって変わる。重力式岸壁及び矢板式岸壁の場
合、最適な安全率Foptは経験的に次式で表される。
Fopt=1.05+0.85(1+log10n)V
ここにnは当初の建設費に対する破壊時の費用の比とし
て定義される被害額率であり、n=0.5〜10である
。Vは地盤定数のばらつきで、V=0.1〜0.2であ
る。
b) 被災額率や地盤定数のばらつきを考慮すると、設計に
用いるべき安全率は構造物の重要度によって以下のよう
に異なった値を用いるべきである。ただし、ここで重要
度は被災額率、すあんわち破壊時のコストの大きさのこ
とを意味しており、実際の構造物の被災額率の氷塊につ
いて経済的・社会的な影響なども含めて検討する必要が
ある。
・地盤が均一で地盤定数の信頼度が高い場合
重要度の低い構造物(n<1) 1.15
一般の構造物(1<n<3) 1.20
重要な構造物(n>3) 1.25
・地盤が不均一あるいは地盤定数の信頼度が低い場合
重要度の低い構造物(n<1) 1.20
一般の構造物(1<n<3) 1.25
重要な構造物(N>3) 1.30
c) 防波堤における提体支持力に関する現行の技術基準の
方法では、設計並による波圧が作用したときの支持力の
安全率1.0の場合に50〜60%の破壊確率が計算さ
れる。しかし、波圧時の荷重の特性や設計波高の出現確
率を考慮して期待沈下量として評価するならば、最小安
全率F=1.0、地盤定数の変動係数V=0.15、耐
用年数50年としたときの支持力附則による沈下量は10
?(三角波形を仮定)〜50?(正弦波形を仮定)であ
り、現行の基準はほぼ妥当であるといえる。
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