ケーソン式の防波護岸に関する水理模型実験を行った。実
験は、当所の大型造波水路で行い、防波護岸の大型模型を設
置して波を作用させ、その変形を観察するとともに、間隙水
圧を測定している。
実験では、現地の吸い出し災害の再現を試みるとともに、
そのメカニズムの検討を行っている。また、二、三の吸い出
し防止工法についても実験的にその有効性を検討した。実験
では、通常の裏込石があるものだけでなく、裏込石がなく直
接埋立土がある場合についても、測定を行っている。さらに
、施工時に対応する、埋立土がない状況についても実験を行
っている。得られた主要な結論は以下の通りである。
1) 防砂シートに穴がある際には、波が作用するとマウン
ド透過波でシート付近の砂がゆるみ、その後の引き波で砂が
吸い出され、空隙の大きい裏込石内に埋立砂が落下する様子
が見られる。その結果、埋立砂内には空洞ができ、さらに空
洞が大きくなると地盤の陥没になる。
2) ケーソン全面の波圧は容易にマウンドを透過して裏込
石内に到達し、裏込石内には大きな圧力が発生する。マウン
ド透過波による裏込石内に発生する間隙水圧は以外に大きく
、ケーソン全面波圧の70〜80%にも及ぶ。さらに、越波
によって護岸背後が冠水した場合には埋立砂の空隙水で満た
されて裏込石内の密閉度が高くなり、ケーソン全面波圧とほ
とんど変わらない間隙水圧が裏込石内に発生する。
このようなマウンド透過並による強大な圧力を減衰させる
ため、裏込石を埋立地盤の天端まで延ばして解放すると、圧
力を標準的断面の30%まで減衰でき、有効な圧抜き工法と
なる。
3) 埋立土の土被りが小さく、埋立天端に比して静水面の
位置が高い場合には、マウンド透過並による強大な揚圧力に
より埋立土が持ち上がられ、埋立砂がボイリング状体となっ
て破壊する場合がある。
4) ケーソン間の目地にはケーソン前面から水塊が入り込
み、目地板には大きな衝撃的な波圧が働く危険性がある。こ
のはあ津は目地内の波面が空気を閉じこめ、これを衝撃的に
圧縮して発生する物で、2ω。Hを越えることもある。しか
し、この衝撃的なはあ津は減勢目地板を設けることによりか
なり低減することができる。
5) 裏込石が無く埋立砂が直接ケーソン背後に置かれる場
合は、目地板が破損するとすぐ砂が吸い出されて危険である
。また、越波や降水によって埋立砂の地下数位が容易に上が
るためケーソンの安定性にも問題となる可能性がある。マウ
ンド内の圧力は埋立砂によって密閉度が高くなるため、ケー
ソン前面の90%程度とかなり高くなる。
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