1995年1月17日の兵庫県南部地震において、神戸港の多数
の港湾施設が被災した。本研究は、神戸港の岸壁の約9割を
占めるケーソン式岸壁の被災メカニズムについて2次元有効
応力解析によって検討を加えたものである。解析対象とした
岸壁は六甲アイランド南側の設計水深-14mの大型重力式岸壁
であり、水平変位約4~5m、沈下約1.5~2.0m、傾斜角約4度の
大きな変形が地震後に生じた岸壁である。また、解析に用い
た土質パラメータは凍結サンプリングなどの調査結果に基づ
き決定し、解析モデルとしてはひずみ空間における多重機構
に基づくモデルを用いた。
解析の結果、水平変位約3.5m、沈下約1.5m、傾斜角4度の
ケーソンの変形が得られ、上述の実被害とオーダー的に整合
する結果が得られた。また、被災メカニズムとしては従来設
計で考慮している滑動等の変形モードと異なり、ケーソン周
辺の置換砂・埋立土の広範囲の変形が生じていることがわか
った。
さらに、入力地震動の加速度レベルや置換砂・埋立土の液
状化強度、上下動の影響などについてパラメトリックスタデ
ィを行い、ケーソン式岸壁の被災変形量に影響を及ぼす因子
について検討を行った。検討の結果、置換砂および埋立土に
おける過剰間隙水圧の上昇に伴う土の軟化により、岸壁の変
形量が純粋に慣性力のみにより変形した場合に比べて2倍程
度まで増加したことがわかった。また、従来の野田・上部に
よる被災事例に基づく被災変形量の予測結果と今回の有効応
力解析による被災変形量の数値解析結果はよい整合性を示し
た。
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