干潟実験施設を用いて物理的撹乱および海水交換が底生生
物群集に与える影響を検討した.また,再現された干潟実験
生態系における生物群集の遷移を経時的に検討した.
底生バクテリアおよび底生藻類の現存量は,流れによる撹
乱を与えた水槽と比較し波による強い撹乱を与えた水槽の方
が少なかった.
これは,底泥のごく表層に棲息する藻類が,再懸濁によっ
て流失したり移動する底泥によって被覆されることが原因と
考えられた.そして藻類量が少ない環境では,藻類から有機
物の供給を受けるバクテリアの現存量も小さい値を示すと推
測された.
より深い泥深に棲息する大型のメイオ・マクロベントスの
個体密度および出現種数は,撹乱強度の異なる水槽間で差が
みられなかった.海水交換頻度の異なる水槽間での生物群集
の現存量には差がみられなかった.
群集の現存量が明確な季節変動および経過時間に伴う一定
の増加・減少を示さなかったことから,生態系が創出されて
8ヶ月までに現存量が動的平衡になっていたと考えられた.
多毛類のイトゴカイや二枚貝のホトトギスガイなどの日和見
種が優占した.
これより,実験水槽内の生態系が初期の遷移状態にあった
と考えられた.
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