湾内の流動および水質変動を数値計算を用いて評価・予測
する際には,湾外の境界条件を与える必要がある.既往の研
究により湾外の境界条件の変動が湾内水質の変動に影響を与
えていることは明かにされている.しかしながら,湾外の境
界条件の変動に対してどの程度の水質変動が湾内に起こるか
については,今のところ定量的な評価はなされていない.本
研究では,そうした影響伝播をモデル化し,湾内水質の長期
再現計算を試み,湾外の水質変動が湾内水質へ与える影響の
評価を行った.
長期再現計算には鉛直1次元モデルを採用し,境界条件は
実測値を用いて与えた.モデル中において湾外水の影響は潮
汐による海水交換率と湾内外の密度差に起因する海水交換と
して表現した.密度差に起因する海水交換率のモデル定数の
決定には,プルームのようなフロントでの非定常混合が卓越
している現象に対しても精度よく解くことができる非静水圧
3次元モデル(CIP-LES-SF)を用いた.このモデル化により
湾内外の鉛直方向の密度分布に対して,湾外の湾内への密度
差に起因する海水交換率が算出可能となった.
底層部のDO濃度の変動に着目し長期再現計算を行った結果
,大船渡湾の底層部の貧酸素水塊の形成・消滅時期に対し,
密度差に起因する海水交換の寄与が大きいことが明らかとな
った.また,その発生頻度はそれほど多くは無いものの,海
水交換率は非常に大きく,潮汐による交換時間は約60日であ
るのに対し,密度貫入による交換時間は1〜3日であることが
示された.
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