
東京湾盤洲干潟の短期地形変動特性とそのメカニズムについて
港湾技研報告 VOL.039 NO.03 2000.09
| 執筆者 | 内山雄介 |
| 所属 | 海洋環境部 漂砂研究室 |
要旨 | 干潟の生態系を保持・創造していく上で,底質の粒径,澪 筋などの微地形や海底勾配を含む地形変化の予測を正確に行 うことは,工学的に極めて重要な課題である.本研究では, 自然干潟における浮遊砂の生成,砂面変動等に代表される漂 砂の基本特性を把握することを目的として,冬期の東京湾盤 洲干潟において,波,流れ,浮遊砂,地形に関する短期の現 地観測を行った. その結果,有義波高0.8mを超える,東京湾奥部としては比 較的大きな時化による有意な地形変化を捉えることに成功し た.これは,下げ潮時に大きな波浪が来襲し,かつ風の吹送 方向と潮汐流の方向が一致したときに大量の浮遊砂が生成さ れて,侵食が進行するというものであった.盤洲干潟は長期 的には3.8cm/yの速度で徐々に堆積しているものの,本観測 では,高濃度の浮遊砂が断続的に発生するイベントによって ,16日間の観測期間中に最大8cm程度の侵食が生じることを 見出した.また,底面せん断応力とシールズ数を用いた解析 を行った結果,盤洲干潟の底質移動には浮遊砂が大きく寄与 していること,そして,潮汐およびそれに伴う水深変化に追 従して変動する波浪が,高濃度の浮遊砂の発生に対して重要 な役割を果たしていることを明らかにした.一方,水位の低 下とともに波高が減少して埋め戻されるため,結果として, 潮汐に対応した形で小規模な侵食と堆積を繰り返しているこ とが分かった. 以上のことから,盤洲干潟の地形は短周期で侵食・堆積を 繰り返しながら,長期的には動的に安定しているものと判断 された. |
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