本研究で対象とした港湾は沖縄県の仲田港である.本港湾
では,1999年10月から同年12月の期間に港口部および港内で
観測された現地データの解析結果より,港内に周期30秒から
300秒程度の長周期波が存在することが認められた.また本
港湾は,港内に発達した珊瑚礁を有するため,浚渫により水
深5mの航路が確保される一方,その他の水域では,ところ
によっては水深が1m程度となる個所があるなど,非常に水
深変化に富んだ地形的特質を有している.そこで本研究では
,長波の伝播に対して高い計算精度が期待され,かつ波の回
折や反射のみならず屈折や浅水変形が考慮されるMadsen and
Sorensen(1992)によるブシネスクモデルを用いて,実際
に現地で観測されたいくつかの長周期波を対象とした波浪変
形計算を行い,3地点で観測された現地データとの比較より
,その計算精度を検証した.港口部で観測された時間波形の
うち,周期30秒以上の時間波形を抽出してモデルに入射させ
たところ,計算モデルによって港内で得られる時間波形は,
現地観測により得られた各地点の時間波形をよく再現してい
ることが確認された.
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