本研究では、浅海域における波浪変形計算法の拡張として
、高山ら(1991)が開発したエネルギー平衡方程式法を
基礎とする波浪変形計算法を基に、2つの要素を取り入れた
。1つは、砕波帯内外での波高変化にともなう平均水位の変
動を、海浜流も含めて計算し、その変動量を考慮した波浪変
形計算法を試みた。2つめは、近年、港内の海水交換のため
に建設が計画されている透過型防波堤が存在する海域での波
浪変形計算法を試みた。その結果、平均水位変動量を考慮し
た波浪変形計算法については、一様勾配を対象とした合田の
砕波変形計算値、平面模型実験値および波崎現地観測値と比
較したところ、その差は、領域の最も岸側において平均水位
上昇量で5〜20%、有義波高で一部を除き5〜30%程度
であることから、本手法は妥当性があることがわかった。透
過型防波堤を考慮した波浪変形計算法についても、透過率4
2%(断面実験値)を有す透過型防波堤を用いた平面実験結
果との比較では、透過堤の影響を直接受ける港口部の区域に
おいて、透過率40%で実施した計算値が実験値と6%以内
でよく一致し、港内についても、多重反射の影響が強い区域
や地形が複雑に変化する区域を除き、透過率40〜50%値
と実験値は15%以内の差であることから、本手法は、透過
堤が存在する海域での波浪変形計算に適用可能であることが
分かった。
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