
兵庫県南部地震による港湾施設の被害考察 (その1)強震記録
港湾技研資料 NO.0813 1995.09
| 執筆者 | 宮田正史,佐藤幸博,井合進 |
| 所属 | 構造部 地盤震動研究室 |
要旨 | 1995年1月17日05時46分、兵庫県の明石海峡付 近を震源とする気象庁マグニチュード7.2の地震が発生し た。気象庁によって、この地震は「平成7年(1995年) 兵庫県南部地震」と命名された。港湾地域強震観測網では、 神戸港を中心とする16港20地点において強震計が作動し 、11港12地点でデジタルデータとしての加速度記録が得 られた。 本資料では、まず地震の概要を示すとともに、港湾地域強 震観測網で得られた記録として、神戸港工事事務所(地表) 、神戸港第八突堤(岸壁上)、尼崎港(地表)の地震動の時 刻歴・軌跡・応答スペクトル等を示す。次に、今回の地震に おける水平最大加速度の距離減衰の関係、および水平最大加 速度と鉛直最大加速度の関係を示す。最後に、近年の大地震 (1993年釧路沖地震および1994年三陸はるか沖地震 )と本地震との比較を、各地震動の時刻歴・軌跡・応答スペ クトル等を通じて行う。これらの結果により、今回の地震動 の特徴として以下の事実が判明した。 (1) 今回の地震において、神戸市・淡路島の一部では気 象庁震度?の激震を記録した。港湾地域強震観測網で は、神戸港をはじめとする16港において強震記録が 得られた。 (2) 神戸港では、SMAC−B2型強震計により地表記 録が得られた。その観測記録(未補正記録)の最大値 は502Gal(N43W)、205Gal(E43 N)、283Gal(UD)であった。また、計器特 性補正後の最大速度は525Gal(N43W)、 230Gal(E43N)、446Gal(UD)で あった。強い水平動とともに強い上下動を受けたこと が、今回の地震動の特徴と見られる。但し、本観測地 点では液状化が認められ、N43W成分は振り切れて いた。従って、この記録の利用に関しては十分な注意 が必要である。また、今回の地震動では、加速度・速 度・変位のいかんを問わず、全て明確な方向性を有し ていた(北北西から南南東方向)。この振動方向は、 推定されている地震断層に対して直交方向にあたった 。 (3) 神戸港における地震動の水平加速度成分の卓越振動 数は約0.8Hzであった。この値は、現在港湾地域 の設計入力地震動に用いられている1968年十勝沖 地震(マグチュード7.9)の八戸港における強震動 の卓越振動数(約1Hz)および1978年宮城沖地 震(マグニチュード7.4)の大船渡港における強震 動の卓越振動数(約2.4Hz)に比較して小さい値 であった。 (4) 本観測記録(神戸とよぶ)を、1993年釧路沖地 震の際に釧路港で得られた記録(釧路とよぶ)、およ び1994年三陸はるか沖地震の際に八戸港で得られ た記録(八戸とよぶ)と比較したところ、水平面内で 最も卓越する方向の最大補正加速度は、八戸(751 Gal)、神戸(538Gal)、釧路(468Ga l)の順となった。また鉛直加速度では、順位が入れ 替わり、神戸(446Gal)、釧路(342Gal ) 、八戸(132Gal)の順となった。 (5) 速度・変位について同様の比較を行ったところ、水 平方向の最大値に関しては、神戸(122?/s、4 3.3?)、釧路(63.0?/s、19.5?)、 八戸(50.5?/s、16.3?)の順となった。 水平速度および変位の最大値は、兵庫県南部地震の値 が非常に大きく、三陸はるか沖地震・釧路沖地震の約 2〜3倍程度の値を有した。これに対し、、鉛直方向 の最大速度・変位は神戸(33.8?/s、10.9 ?)、八戸(11.7?/s、3.1?)、釧路(7 .2?/s、1.0?)の順となっており、水平方向 の順位と三陸はるか沖地震・釧路沖地震が入れ替わる 結果となった。 |
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