1995年1月17日に発生した兵庫県南部地震は、神戸
港の港湾施設に甚大な被害をもたらした。特に岸壁について
は重力式が非常に多く、ほとんどの施設が被災した。本研究
では、神戸港のケーソン式岸壁のうち、位置・設計震度・置
換砂層厚などに違いを持つ14施設を抽出し、地盤の地震応
答計算から各施設の受けた最大の地震動を推定し、現行の港
湾の設計法を用いて地盤の液状化を想定する場合としない場
合のそれぞれについて地震時の安定性を評価した。その結果
、ほとんどの施設で地震時の安全率は1.0を下回り、危険
であると判定されたが、一部の施設では安全率が1.0を越
える結果となり、堤体そのものの安定性からは被災の原因を
説明できなかった。次に、地震時の安定性と被災量との相関
を分析した結果、ケーソンの最大はらみ出し量と液状化を想
定した場合の安全率との間に比較的強い相関性が認められた
。また、一質点系の運動方程式からケーソンの滑動量を評価
し、実変位と比較した。実変位よりも解析値が少ない傾向と
なり、ケーソンの変位には慣性力および背後地盤からの水平
力のほかに、置換砂層のせん断抵抗力の減少などの影響が含
まれていることが推定された。上下動については、水平動と
の位相差のため、影響は少ない結果となった。1994年三
陸はるか沖地震についても一質点系モデル解析を行った結果
、震度法よりも良い再現性を示した。このため、周期が非常
に短い地震動については、静的な力の釣り合いを想定する震
度法よりも、一質点系滑動モデルなどの手法の方が適用性が
高い場合があることがわかった。
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