本資料ではマリーナの浮桟橋のように主桟橋と補助桟橋で
構成されたくし型構造の浮体(くし型浮体)の波浪による断
面力の計算法について提案する。断面力の計算法としては従
来、浮体の動揺を考慮しないミューラーの式、断面分割法に
よる波力およびラディエーション流体力を用いて計算する浮
体の動揺を考慮した方法(断面分割法モデル)とがある。こ
れらの手法は箱形浮体を対象とした計算方法であり、くし型
浮体には適用することができない。そこで、任意形状の浮体
の波力、ラディエーション流体力を計算できる三次元特異点
分布法を用いて、くし型浮体の断面力を計算する方法(特異
点分布法モデル)を提案し、従来の断面力の計算手法との比
較を行った。
本資料の主要な結論は以下のとおりである。
(1) 浮体の動揺を考慮した断面分割法モデルおよび特異
点分布法モデルによる断面力は、浮体の動揺を考慮し
ないミューラーの方法による断面力に比べ、小さくな
る。
(2) 特異点分布法モデルによる計算において、X軸(長
軸)方向の要素分割数が粗いときには、短周期の波に
対しては、断面力が大きく計算される傾向があるので
、1分割要素のx軸(長軸)方向の分割要素長と波長
の比リットルx/λは0.05以下となるように分割数を設
定する必要がある。また、ねじりモーメントを算出す
るためには、浮体のy軸(短軸)方向の分割が必要で
あるが、計算時間の節約等により、実用上は5分割程
度でよい。
(3) くし型桟橋において、動揺に対する補助さん橋の影
響は、補助桟橋の有無、本数、間隔等の違いによる差
が短周期波側で顕著に現れ、長周期波側になるに従っ
て影響が小さくなる。
(4) 主桟橋の断面力に対する補助桟橋の影響は、垂直せ
ん断力、垂直曲げモーメントについては、補助桟橋が
主桟橋の中央に位置する1組および3組の桟橋におい
て単桟橋との違いが特に顕著に現れる。
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