港湾技研資料

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一点係留ブイの設計法に関する研究

港湾技研資料 NO.0829 1996.03

執筆者鈴木康正
所属水工部 波浪研究室

要旨

 船舶を係留するための施設として、大型船舶を沖の水域に
係留し短時間で荷役を行う目的でブイが設置されることがあ
る。係留船舶としては大型タンカーを対象としているものが
多いが、本研究では、係船だけではなくその地点で荷役を行
うことを目的とした大型ブイを一点係留ブイ(Single
 Buoy Mooring略してSBM)と呼んでいる。
 浮体の設計にとっての重要な手段は、電子計算機による数
値シミュレーションであるので、精度の高いプログラムの開
発が必要不可欠である。また、気象・海象条件が厳しくなる
と船舶は離標するので、設計は船舶が係留されている係船時
と非係船時に分けて検討する。したがって、両者の設計の整
合性を保つことも重要である。そこで、非係船時と係船時に
分けて、ブイや係留船舶の運動や係留力の数値解析法および
一点係留ブイの設計手段について検討した。主要な結論は以
下のとおりである。                  
(1) 波浪中における非係船時のブイの運動と係留力につ
   いて                      
   ブイを直立円柱浮体として近似し、それに作用する流
   体力を領域分割法で計算した。固定円柱に作用する波
   力および自由浮体の波浪中動揺について、計算結果と
   実験結果を比較したところ両者はほぼ一致した。ただ
   し、運動の共振点付近では、非線型減衰力を考慮する
   必要がある。                  
    チェーン係留ブイとしてCALM(Catenary Anch
   or Leg Mooring)方式と、SALM(Single Anch
   or Leg Mooring)方式について検討した。CALM
   方式ブイの高波浪中の動揺と係留力について、静的な
   カテナリー理論による計算結果と実験結果を比較した
   ところ、特に沖側の係留チェーン張力の計算値が実験
   値に比べて小さかった。また、SALM方式ブイにつ
   いては本研究では波高や運動振幅の小さいときの計算
   結果を示した。                 
    一方、下端ヒンジ係留円筒ブイ(Articulated Col
   umn略してACブイ)の場合には、動揺振幅の実験結
   果と計算結果はほぼ一致した。また、ACブイの実験
   機を実海域に設置して、ブイの運動を観測した結果を
   数値計算結果と比較したところ、両者はほぼ一致する
   ことが確認された。               
(2) 係船時の船体運動とブイの係留力について    
    一点係留された船体に風荷重が作用すると、風速と
   風向が一定であっても船体は長周期の振れ回り運動を
   する。また、風邪による長周期の振れ回り運動と、波
   による短周期動揺が重なり合うことにより。係留力に
   は短周期のピークが現れる。本研究では定常風と不規
   則波が同時に作用するときに、船体振れ回り運動の数
   値計算法を開発した。係留力の計算結果を実験結果と
   比較したところ、波向と風向きとの角度が60度以下
   では、計算値は実験値の±20%程度いないに入って
   いた。                     
(3) 一点係留ブイの設計法について         
    非係船時の設計は、一点係留ブイの設置地点に来襲
   することが予想される、厳しい海象条件に対する安全
   性を検討する必要がある。一方、係船時の設計は、ブ
   イに係留して荷役を行っていた船舶が、気象・海象条
   件の悪化により荷役を中断し、離標するまでに発生す
   る極大風速と極大波高に対して安全性を確認する。本
   研究では非係船時と係船時の設計の愛大に整合性を保
   つために、設計気象・海象条件に対するブイの供用期
   間中の遭遇確率を両者の設計で同一にするという方法
   を提示した。                  


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