港湾技研資料

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干潟実験施設を用いた物質収支観測

港湾技研資料 NO.0832 1996.06

執筆者細川恭史,桑江朝比呂,三好英一,室善一朗,木部英治
所属海洋環境部 海水浄化研究室

要旨

 当研究所では1994年にメソコスムのサイズスケールを
持つ干潟実験施設を整備した。この施設を利用し、自由に環
境条件を設定した実験から得られる知見は、港湾における干
潟の修復や創生を考える際に大いに役立つと思われる。本研
究では、?この干潟実験施設の概要、?実験施設内水槽の壁
面が底生生物分布に与える影響、?1995年夏期の物質収
支に関する実験についてまとめた。           
 水槽壁面の底生生物への影響に関しては、実験に用いた生
物の現存量の分布に、壁面が直接影響を及ぼしていないと判
断された。今後、壁面がベントスの代謝速度に及ぼす影響に
ついても調査する必要がある。             
 物質収支に関する実験からは、干潟がいつでも浄化機能を
有しているわけではないことがわかった。6月に比べて7月
はどの物質もsink(干潟に物質が蓄積すること)になる
傾向があった。この理由として、7月の実験における物質の
inputが多かったことと、7月から9月にかけて、各水
槽の泥面に珪藻類および藍藻類を主とした底生藻類の大増殖
が起こり、matが形成されたことが推察された。実験水槽
内の生態系は、運転開始から約半年しか時間が経過していな
く、遷移の初期段階にあるといえる。この段階の生態系はま
だバランスがとれておらず不安定である。底生藻類のmat
形成やコケゴカイの大増殖と急激な衰退は、その典型的な例
であろう。                      


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