港湾技研資料

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砂地盤上の斜面の地震時安定性に関する遠心力場振動実験

港湾技研資料 NO.0838 1996.06

執筆者稲富隆昌,風間基樹,飯塚栄寿,永吉貴行,菅野高広
所属構造部 構造振動研究室

要旨

 現在、斜面の安定性は、円形すべり法あるいは直線すべり
法によって検討されている。しかしながら斜面のすべり破壊
を起こす原因の1つである地震力の影響は、不明な点が多い
ため、地震力を考慮した解析方法は設計に取り入れられてい
ないのが現状である。                 
 本研究では、実物と同じ応力状態を再現できる遠心力載過
装置を用いた模型振動実験を実施し、地震動による斜面のす
べり破壊の特性を検討した。得られた主な結論は以下の通り
である。                       
(1) 遠心力場の振動実験の相似則の適用性を検討するた
   め、同一規模の実物に対して1/37.5および1/
   50の2つの模型縮尺の異なる実験を実施し、実験結
   果を相似則により換算し比較した。その結果、2つの
   実験結果は加速度応答、過剰間隙水圧、残留変形量と
   もに整合するものであった。よって、遠心力場の相似
   則の適用性が1/37.5〜1/50の範囲で確認で
   きた。                     
(2) 最大加速度を同一にした正弦波2Hz20波と地震
   波(八戸波)の残留変形量を比較したところ地震波の
   外力レベルは正弦波よりも小さく、正弦波2Hz20
   波と同じ量の変形量を生じさせるためには今回使用し
   た地震波形においては、約2倍の最大か速度とする必
   要があると思われる。              
(3) 飽和砂地盤上の斜面の残留変形が生じる境界面は、
   ほぼ円形すべり的な破壊面となった。しかしながら円
   弧で囲まれた土塊は剛体的に回転変形するのではなく
   、上方ほど大きな変形を示すような流動的な変形モー
   ドとなった。                  
(4) 実験で得られた加速度分布および過剰間隙水圧分布
   を用いて、円形すべり安定計算を行ったところ、実験
   結果を説明できることができた。したがって、実際の
   地盤でも、盛土や地盤の地震応答や過剰間隙水圧の発
   生量をうまく予測すれば、この値を用いて精度のよい
   安定解析の照査が可能と考えられる。


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