港湾コンクリート構造物の塩害による劣化を防止する一つ
の方法として、電気防食法が検討されている。
本資料では、コンクリートの塩分濃度を深さ方向に3段階
変化させ、それぞれの層に独立して鉄筋を埋設させた供試体
を用い、電気防食の効果について基礎的な試験を行った。本
試験により以下のことが明らかとなった。
(1) 塩分量の多い上段のコンクリートに埋め込まれた鉄
筋から塩分量の少ない中、下段の鉄筋へマクロ腐食電
流が流出した。
(2) 上、中、下段鉄筋を短絡して通電試験を実施した場
合、電流は通電量の増大とともに上段の鉄筋へ優先的
に流入し、中、下段鉄筋への流入量は少なく、また、
中、下段へ流入する電流量には差がなかった。
(3) 各鉄筋を短絡して通電した場合、コンクリート中の
含有塩分量が多くマクロ腐食電流が大きかった供試体
では、マクロ腐食電流を停止させるためには2〜4
mA/?の防食電流密度が必要であった。
(4) コンクリート中の含有塩分量が多くマクロ腐食電流
の大きかった供試体で鉄筋を短絡させ通電試験を実施
した場合、中、下段の鉄筋を100mV以上分極させ
るためには20〜40mA/m2の防食電流密度が必
要であった。
(5) コンクリート中の含有塩分量が少なくマクロ腐食電
流の小さかった供試体では、鉄筋を短絡した場合の通
電試験の結果、1mA/m2以下のわずかな防食電流
密度ですべての段の鉄筋を100mV以上分極させる
ことができた。
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