要旨 |
近年,港内で係留されている大型船が前後に大きく動揺し
,荷役が中断されたり,係留索が切断されるなどの現象が報
告されている.動揺する船舶は鉱石運搬船,石炭運搬船,あ
るいはタンカー等であり,載荷重量トンが約50,000DWT前後
のものに被害が集中している.その動揺量は最大で数メート
ル以上にも及ぶ.これらの現象は,各地の港湾での現地観測
によって,港内に伝播した周期1〜5分の長周期波と船舶〜
ロープからなる係留システムとの共振によって生じているこ
とが確認されている.長周期波は風波に比べて波長が長いた
め,これまで風波を抑止する目的で建設されてきた防波堤は
十分な効果を発揮できていないと考えられる.しかしながら
,港外で長周期波が観測されているにもかかわらず,港内で
長周期波による被害が生じていない港湾も存在し,これらの
港湾においては,ある程度防波堤の抑止効果が期待できるこ
とが判明している.
本研究では,模型実験によって,港口部の防波堤による長
周期波の低減効果を定量的に検討した.得られた主要な結論
は以下の通りである.
(1)防波堤を港口部に配置することにより,対策なし
の場合と比較して,港内の長周期波高を最大で約50%低減
することができる.
(2)既存の防波堤開口部を1/2に狭めた場合も,港
内長周期波高の低減に関して,港口部に防波堤を設置した場
合と同様の効果がある.
|