ニュ−ラルネットワ−クとは,人間が有する優れた情報処
理能力を計算機中に模倣するために,脳における神経細胞の
信号伝達系を人工的なモデルとして考案された情報処理手法
である.ニュ−ラルネットワ−クに関する一般的な特徴とし
ては,対象とするデ−タが曖昧さを含んでいる場合,あるい
は原因と結果の因果関係が明瞭に定義できない場合の情報処
理に有効であることが知られている.
本報告は,このニュ−ラルネットワ−クの情報処理能力に
着目して,要素間の因果関係を解明することが困難な港湾環
境の複雑な諸現象に対し,これを今後有効的に活用すること
を目的とした基礎的な研究である.そのためまず始めに,ニ
ュ−ラルネットワ−クの基本的な動作特性として,実行時に
必要なパラメ−タの違いによる出力特性,高精度な出力を得
るための学習デ−タの提示方法,時系列デ−タを対象とする
際のフィ−ドバック型ネットワ−クの有効性,および最適な
予測期間の決定方法として,フラクタル次元を利用すること
の有効性等について議論した.最後にこれらの検討結果を基
に,実際に観測された複数の水質デ−タからクロロフィル-a
量の予測を行い,ニュ−ラルネットワ−クの実デ−タに対す
る適用可能性を検討した.
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