本研究は,1995年1月17日に発生した兵庫県南部地震によ
る神戸港等の被害の甚大さに鑑み,港湾構造物の耐震設計の
拠り所となっている地震動の距離減衰式,地震動の上下動成
分の特性,加速度期待値,震度と加速度の関係等について包
括的な見直しを実施し,新しい地震外力の考え方を整理した
ものである.本研究の主要な結論は以下に示す通りである.
?強震記録の統計解析により工学的基盤における補正最
大加速度,SMAC最大加速度,最大速度および最大変位の距離
減衰式を新たに求めた.SMAC最大加速度に関する距離減衰式
は,従来より港湾の分野で用いられている野田らの式と遠方
(数10km以遠)で整合するものとなった.
?地震動の上下動成分について見直しを実施したところ
,剛体構造物の地震時の滑動安定性に対する上下動の影響は
大きくないことが確認された.
?わが国の沿岸地域の工学的基盤における最大加速度等
の75年期待値を新たに求めた.今回得られたSMAC最大加速度
の期待値は最大加速度の大きな領域ではこれまで用いられて
いる北澤らの求めたものと比較して大きい傾向にある.
?重力式岸壁および矢板式岸壁の作用震度とSMAC最大加
速度との関係の見直しを実施したところ,野田らにより提案
された重力式岸壁の作用震度の上限を与える式の妥当性が確
認された.同様の関係は矢板式岸壁にも準用できると考えら
れる.
?港湾構造物の新しい地震外力の考え方を整理した.
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