港湾技研資料

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デュアル・フェース・サーペント型造波装置による二方向波浪の造波特性

港湾技研資料 NO.0927 1999.03

執筆者加藤雅也,平山克也,丸山晴広,平石哲也
所属水工部 波浪研究室

要旨

 現地観測手法の高度化や方向スペクトルの推定精度の向上
に伴い,ピーク周波数や主波向の異なる双峰型の方向スペク
トルを有する“二方向波浪”の観測が報告されるようになっ
てきた.さらに,東京湾や大阪湾では,湾内の風波に外海か
らのうねりが重畳し,しばしば二方向波浪が形成されると考
えられている.
 一方,これまでに多くの研究機関で波の多方向性を考慮し
た実験が行われ,造波制御方法や解析手法等が確立されつつ
あるが,二方向波浪を造波した例は非常に少ない.特に,い
わき沖や新潟沖で観測されたような交差角が90°以上の二方
向波浪は,従来の直線上に配置された多方向不規則波造波装
置では水槽内に再現することができなかった.
 本研究では,多方向不規則波造波装置をL型に配置したデ
ュアル・フェース・サーペント型造波装置による二方向波浪
の造波特性を検討するとともに,いわき沖と新潟沖で観測さ
れた二方向波浪の再現実験を行い,今後の水理模型実験手法
の高度化に資することを目的とした.
 本論文の主要な結論は以下の通りである.
?水槽内に発生される二方向波浪の方向分布特性は,サーペ
ント型造波機の造波特性に依存し,Smax=25の場合,発生波
の方向集中度は目標値にほぼ一致したが,Smax=10では目標
値より若干高く,Smax=75では目標値より低くなった.
?設定交差角が90°〜120°の場合,発生波の測定交差角の
誤差は概ね±10%以内であり,これまで造波し得なかった交
差角の大きな二方向波浪もデュアル・フェース・サーペント
型造波装置によって精度良く造波できた.
?水槽内の有効造波領域では,目標の方向スペクトルと発生
波の方向スペクトルが概ね一致した.
?現地観測データを二つの独立した方向スペクトルに分離す
ることにより,デュアル・フェース・サーペント型造波装置
を用いて,いわき沖と新潟沖の二例について現地の二方向波
浪を精度良く再現できた.
?今後は,比較的水深の深い場所での構造物の安定性の検討
,港内静穏度の検討ならびに大型浮体の運動特性の検討等に
関して,二方向波浪を考慮した実験を行うことができるよう
になった.


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