本研究は,内湾における水質管理手法の確立を最終目的と
して,三陸沿岸に位置する岩手県大船渡湾において,夏季(
貧酸素期)における湾内水質の現地観測および再現計算を行
ったものである.主要な結論は以下の通りである.
1)貧酸素期(7〜10月)においては,従来からいわれている
ように,底泥からの溶出によると考えられる溶存態の栄養塩
(特にリン)が底層で多くみられ,底層の貧酸素化が栄養塩濃
度の増加と密接な関係があることを確認した.
2)栄養塩を多く含む貧酸素水塊は,下げ潮時において,湾内
水の流出にともなって湾外へ排出される.湾内上下層間の密
度勾配が小さくなるほどその排出量は大きくなることが現地
観測からわかった.そして,その機構が内部波によるもので
あることを2レイヤーモデルによる数値計算で確認した.
3)夏季(成層期)における海水交換機構は,下げ潮時に表層
・底層から流出,上げ潮時に中層から流入の傾向であった.
また,湾内底層水の湾外排出を補償する湾外から湾内底層へ
の酸素供給量は湾内底層水の酸素消費量の約1/3であり,こ
の機構にともなう湾外からの酸素供給量が湾内底層の溶存酸
素量の変動に影響を及ぼしていることがわかった.
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