従来,濁水中の懸濁粒子を取り除く手法としては主に凝集
剤やフィルターを用いている.これに代わる手法として,超
音波の放射圧が微小物体を動かすことを利用し,懸濁粒子を
除去するための研究を行った.実験装置を製作して,超音波
により疑似定在波を発生させ,水中の粒子を凝集し,さらに
搬送させることができた.
この装置を用いて流量,初期濁度,入力パワー,粒径など
をパラメータとして実験を行い,粒子の凝集特性,搬送特性
を調べた.
実験の結果次のことが明らかになった.流入速度と処理能
力との間には,ある速度(しきい速度)を境にして2種類の
特性があり,しきい速度以下では初期濁度に関係なく一定の
濁度の処理水が得られる.しきい速度の特性として,初期濁
度には依存せず,入力パワー,粒径,入射角を大きくすると
しきい速度も大きくなる.懸濁粒子が凝集してできるフロッ
クの搬送速度に関しては入力パワーが大きいほど速く搬送さ
れる.実験的には2.0MHzの場合,200Wの音響パワーを入力
することで,7.9μmの懸濁粒子を含む懸濁液を1秒間に4.2
ml(15l/h、0.36m3/dに相当)の速さで50ppmにまで処
理できることを確認した.今回開発した手法では大量の濁水
処理には及ばず,さらに効率を向上させるための研究が必要
である.しかし薬剤,フィルターを用いず濁水を処理できる
ことから,新しい濁水処理システムの可能性を示すことがで
きた.
|