近年,東京湾(1998年),伊勢湾(1997年),大阪湾(1996年)
および北部九州(1995年)で実施された陸上出入貨物調査のデ
ータを用いて,港湾貨物の流動実態を分析した.陸上出入貨
物調査は,対象港湾の臨港地区などに設定された調査区域へ
の搬出入貨物の一次流動を対象としており,取扱貨物量や件
数などを輸出入,移出入,コンテナ,非コンテナ,品目別に
解析するとともに,背後圏域の分析を行った.なお,本研究
の対象4地域で,全国の海上出入貨物の輸出で約70%,輸入で
約50%,内貿(移出・移入)で約40%,外貿コンテナ貨物で約90
%を取り扱っている.
これらの解析から,
(1)近年の港湾取扱傾向としては,取扱貨物量は伸びていな
いものの,コンテナ貨物量は増加しており,多くの品目でコ
ンテナ比率の上昇,コンテナ化が進展している.
(2)三大湾,北部九州の各地域の背後圏については,伊勢湾
,北部九州の背後圏は比較的狭く,県内流動が主であるのに
対して,大阪湾,東京湾の背後圏は広い.この傾向は,コン
テナ貨物で著しい.
(3)非コンテナ貨物については,品目別の背後圏の解析によ
り,各地域毎に,県内流動が主である品目,県外流動が大半
を占める品目が把握できた.
(4)仕出地,仕向地からみた利用港湾は,各地域,品目,貨
物形態などによって異なる.コンテナ貨物の利用港湾は,関
東地方では,横浜港と東京港に2分され,東海・中部地方で
は,名古屋港,近畿・中国・四国地方では,神戸港,北部九
州では,北九州港と博多港の利用が多い.なお,大阪府では
大阪港,三重県では四日市港の利用も多い.また,非コンテ
ナ貨物の利用港湾は,県外流動比率が高い品目に関して,利
用港湾が複数にまたがるケースが多いことが確認できた.た
だし,伊勢湾におけるその他非金属鉱物(輸出)や北部九州の
米・雑穀・豆(輸出)のように,仕出地の都道府県でみると名古
屋港や博多港等の個別の港湾のみを選択しているケースもみ
られた.
これらの結果は,我が国の物流拠点として重要な4地域の
港湾貨物の流動特性を示すとともに,今後の港湾の整備,運
営の基礎資料となるものである.
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