平成11年9月24日早朝,九州に上陸した台風9918号によっ
て,九州・山口地方では多数の死傷者を出すなどの甚大な被
害を被った.台風の中心付近が通過した苅田沖では波浪観測
が実施されているが,台風9918号によってこれまでに観測さ
れた既往最大有義波高の記録が更新された.
本研究では,波浪推算法を用いて,台風9918号による異常
波浪の再現計算を行った.再現計算に際しては,最初に台風
モデル(Myersの方法)を用いて風場の推算を行い,特に,
内湾海上風を対象とした風観測値の再現性を検討した.その
結果,内湾海上風については陸上地形の影響を考慮した修正
を行い,その妥当性を確認した.その後で,この風推算値に
基づいて第3世代波浪推算モデル(WAM)を用いて波浪場の再
現計算を行い,台風9918号による沿岸波浪の出現特性を検討
した.また,我が国で長年用いられてきた実績のある第1世
代波浪推算モデル(MRI)を用いて同様の再現計算を行い,両
モデルによる波浪場の再現性の比較を行った.推算結果の評
価に際しては,有義波高などの有義波諸元および方向スペク
トル観測値との比較を行うことにより,これら既往の波浪推
算法の推算精度や適用性および問題点等について検討した.
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