1999年9月24日に九州・中国地方を通過した台風9918号に
より,これらの地方では設計値を上回るような高潮・高波に
よって多くの災害が発生し,特に構造物の観点からは護岸の
被災が顕著であった.被災護岸では,消波工の天端高さが十
分ではなく,高潮時には静水面が消波工の天端付近となって
不完全消波状態となり,ここで砕波して衝撃砕波力が発生し
たことで上部工の被災に至ったと考えられるものが少なくな
い.そこで本研究では,この高波・高潮災害のうち防潮護岸
の被災に絞って検討を行うこととし,多くの事例がある周防
灘の中から6地点を選んで被災状況の調査を行うとともに,
水理模型実験も併せて実施した.
実験では,護岸本体の被災状況の再現,護岸の被災に伴う
越波流量の計測,上部工に作用する波圧の計測を行った.ま
た,現地断面以外に,断面の異なる場合についても実験を行
って比較を行うとともに,それらの結果から,明確でなかっ
た,不完全消波の場合や高潮時で相対天端が非常に低い場合
の越波流量,従来の波圧式では算定できなかった,不完全消
波断面で静水面が消波工天端より低い場合の波圧について新
しい算定法を提案した.
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