近年,CO2による地球温暖化や天然原料の枯渇或いはその
採取に伴う環境破壊が問題視され,循環型社会構築のための
いろいろな努力が始まっている.鉄鋼業において副生的に発
生するスラグを用い,セメントを用いずに全量リサイクル資
材を用いて,比重が大きく,アルカリ溶出が少ない固化体が
できることを見出した.本研究は,スラグ固化体の基礎的性
質と,海洋環境下での適用性評価を目的として,強度特性,
波浪・漂砂などを想定した擦り減り特性,長期の安定性の目
安とした高温海水養生による強度変化,沈設時に海域に及ぼ
す影響について検討したものである.
スラグ固化体に関する本研究で得られた主な結論は,以下
の通りである.
1) コンクリート製造と同様な装置,同様な手順でスラグ
固化体を製造することができる.
2) ブリーディング量が小さく,しかもブリーディング水
中への有害重金属の溶出が無い.
3) 固化相はカルシウムとシリカおよびアルミナの水和物
である.
4) スラグ固化体の比重は2.5程度で,普通コンクリートよ
り1割近く大きくなる.
5) スラグ固化体の標準養生における強度発現では,91日
強度が28日強度の1.3倍になる.
6) 同じ圧縮強度の普通コンクリートと比較すると,曲げ
強度,引張強度は同等だが,弾性係数が小さい傾向にある.
7) 擦り減り係数は,同じ圧縮強度の普通コンクリートと
比べて小さい.即ち擦り減り抵抗性は大きい.
8) 60℃及び40℃の海水に6ヶ月浸せき後の圧縮強度は浸
せき前の1.5倍になる.
9) 海水に暴露した場合,周囲の海水のpH上昇が普通コン
クリートと比べて小さい.
10) スラグ固化体は,無筋ブロック系の港湾構造物への適
用は可能であると考えられる.
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