本研究は,常時微動アレー観測を用いた地下構造推定に関
する研究の一環として,地盤の平均S波速度を直接推定する
手法の適用性を検討したものである.地盤のS波速度構造は
,地盤の振動特性や強度特性を知るうえで非常に重要な指標
である.
しかしながら,地盤のS波速度構造の把握は,PS検層など
の土質試験を実施する必要があるため,経済的な観点により
強震観測地点などのごく限られた箇所においてのみ実施され
ているのが現状である.本研究で対象とする常時微動アレー
観測は,比較的容易かつ経済的に実施することが可能であり
,観測結果をもとに空間自己相関法を適用して基本モードレ
イリー波の位相速度を求めることにより,地盤の平均S波速
度を推定することが可能である.このため,観測位相速度を
もとに推定される地盤の平均S波速度の精度が実用的な範囲
にあることが確認できれば,耐震設計やサイスミックゾーネ
ーションなどの多方面な分野に適用することが考えられる.
このような背景のもと,本研究においては港湾および空港
地域においてPS検層の実施されている全国の19地点を対象に
,常時微動アレー観測を実施し,空間自己相関法を適用する
ことによりレイリー波位相速度を求めた.得られた位相速度
と波長の関係から平均S波速度を推定し,弾性波探査試験結
果と比較したところ,両者は非常によい一致を示した.
このことより,常時微動観測の地下構造推定への適用性が
確認された.
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