港湾技研資料

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閉鎖性内湾の底層溶存酸素濃度に対する湾口防波堤の影響

港湾技研資料 NO.1004 2001.06

執筆者岡田知也,中山恵介,宮野仁,古川恵太
所属海洋環境部 環境評価研究室

要旨

 三陸沿岸のいくつかの湾には津波対策として湾口防波堤が
建設もしくは計画されている.閉鎖性内湾に湾口防波堤が設
置されると,湾の海水交換率は小さくなり,水質が悪化する
ことが懸念されている.そこで本報では,水質指標として底
層の溶存酸素を用いて,湾口防波堤の影響によって底層の溶
存酸素濃度がどの様に変化するのかについての検討を行った
.検討対象は現在湾口防波堤を建設中の釜石湾である.
 まず,湾口防波堤が設置されたことによる湾内底層の溶存
酸素濃度の変動特性を検討するために,既に湾口防波堤が設
置されている大船渡湾について既に得られている知見を整理
した.大船渡湾においては,防波堤が設置後において長期的
な溶存酸素濃度の低下傾向が見られないこと,冬期には一旦
上昇することが示されている.このことから,湾口防波堤が
設置された閉鎖性の湾においても,湾内の溶存酸素濃度は海
水交換量と負荷量の1年間のバランスによって成立しており
,長期的な溶存酸素の低下傾向は現われないことが考えられ
た.
 この特性を踏まえて,釜石湾の底層溶存酸素濃度に対して
湾口防波堤が海水交換率に与える影響を考慮した数値的検討
を行った.計算手法としては,海水交換率の算定に三次元非
静水圧モデル,湾内溶存酸素濃度の計算に鉛直一次元モデル
を用いている.計算ケースとして,@現状およびA完成後の
地形条件に加え,比較対照としてB湾口防波堤がない場合,
Cマウンドのみの場合およびD開口部のマウンドがない場合
の5ケースを実施している.
 計算を実施した結果,湾口防波堤が建設されたことによっ
て海水交換率が低下し,夏期における底層部の溶存酸素濃度
の最低値は低下する.しかしながら,湾口防波堤が完成して
も現状の溶存酸素濃度のレベルから急変することはないと考
えられる.


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