空港着陸帯およびその他空港基本施設の周辺には植生が施
されており,空港舗装やターミナル施設等以外の地表面には
広大な緑地が形成されている.これらの緑地,特に着陸帯の
植生は,単に修景のためのものではなく,航空機を安全に運
用するための地表材料として用いられている.わが国の空港
では,植物種として主に芝草類の地被植物が施工されている
が,その管理業務として年に数回の草刈りと刈り取った草の
処分を行っている.この草刈り業務は主に航空機運航の安全
確保,周辺に対する影響の防止,および美観の確保を目的に
実施されているが,空港では植生の施工面積が広大であるた
め,植生管理に要する費用が多大なものとなっている.
本研究は,空港着陸帯等の制限区域内における植生技術の
合理化を目的としたものである.ここでは,わが国の空港全
般における植生の実状を調査し技術的課題を整理するととも
に,東京国際空港に代表される建設残土地盤上の海上埋立空
港を主たる対象にした数種類の植生試験を実施して,管理費
を軽減するための新しい植生技術についてまとめている.本
研究で得られた主要な知見は次のとおりである.
1) 多くの空港における着陸帯の植生管理については,費用
ならびに業務の煩雑さの点でいくつかの問題点があると考え
られる.
2) 雑草侵入による着陸帯の美観低下も指摘されていること
から,その植生には被覆性に加えて,雑草侵入を抑制する機
能も必要と考えられる.
3) 維持管理費を効率よく縮減させるには導入植物種を見直
す必要があり,その場合,矮生でほふく性能に優れた植物種
が望ましい.
4) 上記のものとしてイワダレソウが有望であり,これを主
体とした植生は機械施工が十分に可能で,広大で平坦な空港
着陸帯において問題なく導入できるものと考えられる.
5) 維持管理費を縮減するためには,建設時に矮生でほふく
性能が優れた植物種を導入することにより比較的早い時期に
地表面を密に被覆して,その後は雑草管理と導入種の生育管
理のみに務めるという手法が考えられる.これは,トータル
コストの点からも有利となる.
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