国総研資料

一覧へ戻る

気液混相流同時解法スキームを用いた数値風洞水槽の開発 −完全保存型アルゴリズムの構築−

国総研資料 NO.0035 2002.06

執筆者水谷夏樹,佐藤裕司,鈴木武
所属沿岸海洋研究部  沿岸域システム研究室

要旨

 本研究は,数値風洞水槽の開発を目指し,気液混相流体場
の解析を行うことが可能な数値スキームを開発することにあ
る.港湾構造物の合理的設計に資するために,外力である波
浪を高精度に推定する必要があるが,日本の全ての港湾にお
いて波浪を長期観測することは現実的ではなく,そのような
場所においては波浪推算モデルを用いなければならない.こ
のことから実際に港湾が存在する沿岸域のような浅海域にお
いて外力波浪を精度良く推算するためには,WAMなど現在の
波浪推算モデルをさらに高分解能・高精度化する必要がある
.しかしWAMを代表とする第3世代の波浪推算モデルは,異
なる成分波間における非線形相互作用の計算方法のみが突出
して進歩しているものの,風から波へのエネルギーの入力及
び,砕波による波のエネルギーの散逸過程については第1世
代より何ら改善されていない.沿岸域のような浅海域におい
ては強風による白波砕波はもちろんだが,水深の浅水化によ
る砕波もスペクトル空間上で取り扱わなければならない.実
際にWAMの浅海版であるSWANが開発され実用化されつつある
が,複雑な地形を考慮した波浪変形を精度良く推算する段階
には至っていないのが現状である.今後,益々実務に伴う要
請が細分化し,局地波浪予測の必要性が増すにつれて,現状
のモデルでは不十分な点が多く,ここで再度現象を捉え直す
ことで風からのエネルギー入力及び砕波によるエネルギー散
逸過程を合理的にモデル化する必要がある.
 そこで本研究では,風による波の発達過程及び砕波による
エネルギー散逸過程を詳細に検討するため,風(気相)と波
(液相)を同時に解法する数値スキームの開発を行った.そ
の第一段階として計算アルゴリズムの検証と基礎的な自由水
面の変動問題,特にダムブレイク問題や気泡の上昇問題につ
いて検討を行った.本研究ではC-CUP法をベースとしたが,
表面張力モデルの導入と数値拡散によって気相と液相の密度
が混和する問題を回避する完全保存型のアルゴリズムを導入
した.
 その結果,オリジナルのC-CUP法では,中間的な密度層が
生成されてしまうことによる非物理的な現象の回避に成功し
,最終的な目的である数値風洞水槽の開発へつながる結果を
得た.ここでは,その第一報として本スキームの概要を説明
し,各計算例を示すとともにスキームの検証結果を示す.

一覧へ戻る

お問い合わせはkikaku@ysk.nilim.go.jpまでお願いします。

(C)Copyright 1996-2007 Nationnal Institute for Land and Infastructure Management(NILIM)
No reproduction or republication without permission.