本研究は、和歌山下津港本港地区埋立計画において扱われ
た景観的課題に関する議論内容に立脚し、沿岸域景観の知覚
特性として(1)恒常性 及び(2)視野角 の2点につい
て実証的に考察するものである。
恒常性については、(a)海洋表面及びチェック格子のテク
スチャ面上に(b)大きさ,(c)視軸方向距離,(d)視軸方向最
短距離,及び(e)視軸直角方向距離 の異なる3円柱群を描
き、これらの組合せ映像に基づいて被験者に大小関係を判断
させる実験を行った。これと実際の大きさの一致する度合い
を「正答率」として集計し、クロス集計及びロジットモデル
分析を行った。クロス集計により、海洋表面の介在による“
遠方にあるものを実際よりも「小さく」知覚させる傾向”を
示した。また、ロジット集計の結果、遠方に大きな構造物が
ある場合、及び遠方に小さな構造物がある場合の上記変数(a
)?(c)、ならびに同じ大きさの比較の場合における上記変数
(a),(c),(d),(e)の寄与(70%以上信頼確率)を指摘した
。
さらに、実際人間が認知する沿岸域景観の視野角を、従来
のシーン景観検討において用いられてきた頂角60°コーン説
に着目し検討した。実験によって被験者の回答した視野角を
測定・集計し、その分布範囲ならびにコーン説との比較検討
を行い、沿岸域景観における物理的視野角と知覚視野角の相
違や、視覚要素のグループ像としての包含・認知傾向を指摘
した。
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