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景観資産としての東京湾第二海堡に関する研究

国総研資料 NO.0037 2002.06

執筆者岡田昌彰,鈴木武,朝倉光夫
所属沿岸海洋研究部  沿岸域システム研究室

要旨

 本研究は、東京湾口屈指の軍事施設として建設された第二海堡を対象とし、その
景観的現況調査とその特長の整理、現景観のもつ即物的価値の明確化、ならびに関
連する景観整備事例を整理し、今後議論しうる第二海堡の景観整備に対する
指針検討に資する資料とすることを目的とする。
 1914年に竣工した第二海堡は、関東大震災による被災,戦後の米軍による接取・
爆破を経て、現在は若干原型をとどめるも構造物の各部分が倒壊・散在するといっ
た状態となっている。細長い「ヘ」の字型の特徴的な平面形状を呈している
ため、各構造物が線的に配置されており、それぞれの場所ごとに特徴的な景観を呈
している。特に平面的に現存する砲塔などの「固定式構造物」と、隠顕式砲台や探
照塔のように破壊された地下空間が露出し垂直秩序の卓越する「隠顕式構造
物」とが現景観の特徴を形成している。加えて、即物的な「廃墟景観」としての価
値獲得の可能性について、既存研究における産業廃墟景観評価の枠組みをもとに探
求している。特に東京湾岸に点在する同時代の戦跡(猿島,第一海堡,観音
崎,花立 等)との比較検討を行っている。
 最後に、既存構造物にできるだけ手を加えずにコンテクストのみ操作する近代化
遺産の景観整備手法事例を紹介し、技術史的ならびに社会的価値が明確化された後
の景観整備手法に対する指針への示唆を試みた。

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