国総研資料

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荒川河口域における混合形態に伴うChlorophyll-a動態と海域への河川流入負荷量変動

国総研資料 NO.0087 2003.06

執筆者岡田知也,中山恵介
所属沿岸海洋研究部  主任研究官

要旨

潮差等によって混合形態から混合強さが変化する河口域は河川流入負荷の緩衝領域
であることが、観測と数値計算の両側面からの検討によって明らかとなった。観測
データは、夏期の荒川河口域において実施された塩分、植物プランクトン、栄養塩
に関する縦断面観測および荒川河口沖10kmに位置する東京灯標におけるChl-aの連
続観測に基づいている。荒川河口域は大潮・小潮に伴って、河口の混合形態が強混
合型から弱混合型に変化する水域である。縦断面観測から河口域のChl-aの鉛直分布
は混合形態によって大きく異なっていること、また、連続観測から表層Chl-a濃度は
潮位振幅に依存し潮位振幅が小さい場合の方がChl-a濃度が高いことが示された。さ
らに、これら空間的・時間的に断片的な観測結果は、数値モデルによって補われ河
口域の混合形態とChl-aの関係の全体像の把握がなされた。その結果、一時生産が高
い水域の分布は、弱混合型では流下方向に長くかつ水深1m付近に薄く分布するのに
対して、強混合時には流下方向には短く水深方向には暑く分布した。それに伴い植
物プランクトンも同様の分布を示すことが示された。また、対象水域内において、
一次生産量は弱混合時の方が強混合時よりも高く、植物プランクトン量は弱混合時
前から強混合前にかけて増加し、強混合時から弱混合時前にかけて減少する。さら
に、河口部における栄養塩の河川からの排出量は、弱混合時は強混合時の約3倍の
大きさになることが本数値実験から示された。

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