地球温暖化ガスの排出量削減など,環境問題への取り組みがますます重要視されつ
つあり,それは港湾整備事業においても例外ではない.環境対策を推進するために
は,港湾のライフサイクル全体を対象とした環境負荷の発生量を正しく把握するこ
とが前提となる.
そこで本研究では,港湾荷役作業中にコンテナヤードを走行するトレーラーを対象
として,燃料消費量を把握することが可能なモデルを構築することを目的とする.
本研究で得られた知見は,環境に配慮した港湾整備計画の作成の一助となると位置
付けられる.
トレーラーにGPS装置及び燃費計を取り付け,コンテナヤードにおいて走行実験を行
い,速度と燃料消費量等のデータを取得した.速度・加速度のデータから,転がり
抵抗・空気抵抗・加速抵抗の各走行抵抗を算出し,抵抗に対する仕事量と燃料消費
に伴う熱量と比較した.次に,速度の推移を基に,走行データを加速区間・等速区
間・減速区間などに分割することにより,運転パターンを数値化し,燃料消費量の
推計モデルを構築した.最後に,数値化した運転パターンを用いて推定した燃料消
費量の推定値と,実測された燃料消費量の比較を行い,モデルの推計精度を検証し
た.
速度・加速度の実測データより,転がり抵抗・空気抵抗・加速抵抗の各走行抵抗を
算出したところ,加速抵抗が全体の70%以上を占め,加速の影響を分析することが重
要であることが分かった.一方で空気抵抗は,平均速度が遅いことから,全体の3%
程度にとどまった.また,走行抵抗に対する仕事量と,燃料消費に伴う熱量の間に
は高い相関が認められ,走行抵抗を算出することにより燃料消費量を推定すること
が出来ることが明らかとなった.ドライバーごとに運転パターンを数値化したとこ
ろ,直線距離・カーブの配置といったコース形状に起因する要素と,最高速度・加
速度などドライバーに起因する要素によって運転パターンが決定されることを示す
ことができた.最後に,コンテナヤードの大きさと形状から,燃料消費量を推定す
るモデルを構築した結果,推計結果と実測値との間にはよい相関が認められ,推計
モデルの有効性を示すことが出来た.
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